2005年06月11日

「自由」と「束縛」 (「自分」を超えよう その2)

私は、「金属バカ」なんじゃないかと思うくらい、金属どっぷりなので、私自身が実感を持って感じる限りということで、今回も書き進めてはおりますが。きっと、どんな工芸の世界でも、どんな分野でも業種でも、多かれ少なかれ同じような事が言えるのではないかと思います。
で、金属の場合。(とは言っても、金属の中でも、さらにごくごく一部の話ではありますが。)


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金属という素材。その素材感や表情、加工などのイメージが、固定化されてしまいがちなように感じます。けれども、実は、恐ろしいほどに自由な素材である、ということを、私自身も、鍛造という技法に触れてから知りました。

用途にしても、雑貨のような小物から、インテリア、エクステリア、建物そのものに関わるような構造から、橋や乗り物にさえなってしまう。
とりあえず、この形にしておけばオッケー的な、基本となる「定番」のような形も用途も、あるようでそんなにない。

造形上でも、表面に浮かび上がる表情や、加工方法、それによって浮かび上がる形。それらも、自由きわまりない。
私の教わっている先生のさらに師匠にあたる方は、「金属は、素材の持つ制約を最も受けにくい素材」とおっしゃっていました。

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もちろん、金属(鍛造)の場合でも、いわゆる「定番」的な表現や加工方法も、あるにはあるんですけれどね。例えば、日本やヨーロッパなどの伝統的な技法や、それらによって出来る形。
一般的に馴染み深く、比較的目にしやすいいものと言えば、やっぱりヨーロッパの街並みに古くからあるような門扉や柵、面格子などに見られるものでしょうか。くるくる渦を巻くような唐草模様(?)状のものや、植物モチーフの文様、いわゆる「タマネギ」と言われるような飾りであったり。ロートアイアン、と呼ばれる世界。(例えばこちら⇒「日本インディア販売」のサイト)

ただ、私が今学んでいる工房では、あまりそうした技法的なことには捕らわれずに、基本的に『やりたいことや(新しい)表現は、自分で探して自分で見つけなさい』といった方針なので、なおさら「自由極まりない」と感じるのかもしれません。
前述の、先生の師匠の作品は、同じ「鍛造」という技法でありながら、いわゆるロートアイアンの世界とは、似て非なるもの。何と言うか、凄いです。わびさびのような和の心を感じさせ、どこかアジアン的なものにも通じながら、生き生きとした生命感や躍動感に満ちあふれているもの。
「極める」という言葉がありますが、まさにこういうことを指すのではないか、と思ってしまいます。シンプルでありながら、これ以外にはありえないのでは、と見る人に思わせてしまうような、洗練されたデザイン。ただひたすらに格好良く、美しい
「松岡信夫+アインズ」のサイトで、いくつか作品も紹介されていますが、ごく一部しか載っていないですし、画像だけでは分かりにくいかもしれません・・・。)
多分、この方の作品を知っている方は、私の作品が、この方の影響をもろに受けてしまっている事が一目瞭然なのでは・・・と思います。

前回(その1)の方で、「頭の中だけで思いつくのは、すでにどこかで知っているモノ。どこかで見たことのある世界。」と書きましたが、例えば金属の場合(というよりも、私の場合)、ヨーロッパの伝統的ロートアイアンや、松岡先生の世界が、「すでにこの世に存在している世界」。(もちろん、他の作家さんの作品も、多々ありますが。)「極める」という意味では、長い歴史の中で熟成され、形作られてきた伝統あるロートアイアンの世界も、ひとつの極められた形ですし、一方、松岡先生の作品も、用途や機能、素材の可能性を新たに追求した先に行き着く、極められた形のように思います。(実際に自分で何かを考え、作ってみようとした時に、松岡先生は本当に凄い方だ、ということを痛感してしまいます。)


私は、松岡先生の前述の言葉に惹かれ、その作品自体に魅了され、金属の持つ、その限りない造形上の自由さに憧れ、この道に足を踏み入れてしまいました。そして、実際に足を踏み入れてみれば、そこにはやはり、「自由」な面と「束縛」される面、その両方があり、互いにせめぎ合う両者に翻弄されることとなってしまいました。

金属の自由さは、まるで、あれ、です。その自由さに惚れて付き合い出したら、奔放なまでに自由すぎて、途方に暮れてしまうような感じ。(←って、またなに書いてんでしょう。まぁ、前回にひきつづきってことで、もう、いいです。例えば、の話なので、あんまり深読みしないで頂ければ、これ幸いかと。)
そんな自由奔放な金属を相手にしようとしたら、頭で考えるだけでは、答えなど出てくるはずもなく。
前回も書いたとおり、どうやったら、どんな表情になるのか。どう加工したら、どんな形になるのか。実際にやってみなければ分からない事、体で覚えなければ身につかない技術、自分自身で見つけていかなければならない、新しい表現、新しい加工方法。
限りなく自由である金属の、表現の可能性を探るためには、何よりも自分の手で探し、試し、考える必要がある、という事。

115659-s例えば、前回最初に載せたこの画像。
これ、以前まったく別の加工に悪戦苦闘していた際に、偶然出来ていた形です。

すっごくいいなぁと思うんですよ、個人的に。
この形、この表情。
いずれ何かに使えないかなぁと思って、ひねくりまわしながら考えているんですけどね。

(それから、今回載せているその他の画像は、さまざまな加工方法、表現方法を、自分で考え、実験してみるという昨年度の課題の時のものです。)



こういう形自体や、どうやったらこの形になるのか、ということは、それこそ今まで知ってる範囲の頭で考えたところで、なかなか出てきはしないんですよね。形を先に見ていたら、コロンブスの卵のようなもので、こうやれば簡単に出来るじゃん、というようなものでも、まだ形になっていないものを、いきなり頭で考えようとしたって、相当難しいものだと私は感じています。

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そして、以前、コメントにも書いたのですが、一方では、すでにあるものに多大な影響を受け、その影響から逃れようとしても逃れられないジレンマがあります。いくら想い描いても、すでにある世界の呪縛から解き放たれる事がないような。まるで現実の世界そのままに、自由と束縛の狭間で揺れ動く自分がいます。束縛があるからこそ、自由を求めつつ、けれども決して、束縛から逃れる事は出来ない。自由であることの前提としての束縛。いくら断ち切ろうとしても、決して途切れる事のない、密接に関わりあう両者。


すでにある世界の中での、自分の存在や立っている場所を確かめながら。
すでにある世界に、敬意を払いつつ、その先に、新しい世界がないかと探し求め。

自分が自分であるためには、今の自分を超えなければならない。

そう、最近特に強く思うようになりました。


自分が何をしようが、自由だとは、歳を重ねてくるうちに、さすがにもう思わなくなりましたが。
暖かな「束縛」があってこそ、今の自分がいる。それを大切にしながら、けれどもその先に、ほんの少しだけの「自由」を探し求める。
その自由さをひとつ知り、またひとつ確かめていくのには、おそらく一生かかることでしょう。
けれども、そこには、一生を費やすだけの価値がある。
私は、そう思います。


始めに何を作るのか明確にして、そのとおりにつくれるように、能力や技術を高める事も大切。
まだ見た事もないような、新しい表現の可能性を求めて、日々試行錯誤や実験を繰り返す事も大切。


結局は、両者のバランスをいかに上手く取っていくか、ということなのだと思います。
振り子のように行きつ戻りつ、そしてらせんを描いて上昇していくように。



今、自分の周りを見て、感じる事。そして、自分自身にも言い聞かせる事。

最初から完璧である事を、求める必要はない。もとより、完璧であるものなど、ないのだから。
若ければ若いほど、完璧ではないことを恐れ、何もかも完璧である事を求めてしまうのかもしれませんが・・・。
かつての私の友人にもいました。「『完璧主義者』すぎて、何も出来ない(しない)」、という人が。(今、彼はどうしているのでしょう・・・。音信不通になってしまい、誰も消息を知らないらしいのですが・・・。)

私は、声を大にして言いたい。
「とにかく、やってみたらいいじゃん」、と。


今は完璧でなくてもいい。ただ、今の己の最善を尽くせればいい。
それがどんな結果であっても、今の自分の姿、最善を尽くした上での結果なのだと、納得すればいい。その結果(現状)に、安易に満足してはいけないが。
たくさんの失敗をし、上手くいったところを見つけ、両者から学び、次に繋げていければいい


次へ、その先へ。


自分を、超えていこう。




いつもありがとうございます。感謝の気持ちを込めて。



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posted by Metal_NEKO at 03:40| Comment(0) | TrackBack(0) | Metal -NEKO- Works | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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