2005年08月28日

「繋がっていく点と点」 〜スティーブ・ジョブス氏の言葉 Vol.1〜

私がよく拝見しているblogのひとつに、北海道で美術の先生をされている山崎さんの「美術と自然と教育と」というのがあります。
いえ、私自身は美術教育の現場には関わりはないのですが、(若い世代への)美術教育のあり方というものに、最近少なからず関心があったりもしまして。 それに、こちらのblogで紹介される北海道の山々の写真が美しく、昔登った大雪山系の雄大な景色が懐かしく、時折こっそりお邪魔させて頂いています。

そんなこんなで、「美術と自然と教育と」を拝見していましたら、 〔「つなげる力」 ('05/8/24)〕 という、とても興味深い記事がありました。その記事の中で紹介されていたのは、マッキントッシュ・コンピュータの生みの親、スティーブ・ジョブス氏のスピーチ。気になって、私も全文を読んでみたら・・・、とても感銘を受ける言葉の数々に出会う事が出来ました。


もともとの原文は、
〔アップルコンピュータ創立CEOのスティーブ・ジョブス氏のスタンフォード大学卒業祝賀スピーチ(翻訳 市村佐登美さん)〕
というもので、以下、太字「」内部分は、
PLANet blog. 〔スティーブ・ジョブスのスピーチ('05/7/26)〕
から引用させて頂いています。
(興味を持たれましたら、ぜひ上記blogにて、全文をご一読ください。)



そんな訳で、今回は、スティーブ・ジョブス氏から、これから羽ばたいていく若者たちへ向けて贈られた、氏自身の波乱万丈な実体験に基づく心に染みる言葉の数々を、ご紹介させて頂きます。
ある意味、前述の本文を読んで頂ければ、私の紹介など、読まなくてもいいのかもしれませんが・・・。まぁ、そこは、私なりの感慨や捉え方などを交えつつ、ということで・・・。
ちなみに、あまりにも感銘を受けてしまったので、多分だいぶ長くなりそうです。3回くらいに分けて投稿していくつもりですので、気長にお付き合いいただければ幸いです。




ジョブス氏は、その生い立ちからして、すでに波乱万丈な印象があります。
生まれる前から養子に出される事が決まっていて、その先も二転三転、そして家庭の事情から、自ら大学を中退する事を決めています。
しかし、その選択は、後になって振り返ってみれば、「人生最良の決断」だった、とジョブス氏は回想します。
ジョブス氏は、大学を辞めたことで、意味を感じられなくなっていた必修科目から開放され、「とりあえず」とカリグラフィの講義を受講したそうです。
そして、そこで学んだ書体の美しさが、後にマッキントッシュという、「美しいフォント機能を備えた世界初のコンピュータ」を生み出すことに繋がったといい、次のように述べています。

「君たちにできるのは過去を振り返って繋げることだけなんだ。だからこそバラバラの点であっても将来それが何らかのかたちで必ず繋がっていくと信じなくてはならない。
(中略)
点と点が自分の歩んでいく道の途上のどこかで必ずひとつに繋がっていく、そう信じることで君たちは確信を持って己の心の赴くまま生きていくことができる。」


このことは、私自身、非常に強く実感している事です。大学(生物学)→就職(製造工場勤務)→工芸の世界(鍛造)へと、選択してきた私の点と点は、その時その時に他の人から見れば、まったくと言っていいほど関連がないように思え、都度、「何故?」と問われたものです。
でも、その時々にも、私自身の中には確信がありましたし、後になって振り返ってみれば、やはりそれらは、すべて一本の道に繋がっているものだったと、改めて感じています。

「確信を持って己の心の赴くまま生きていくこと」が、厳しい現実を前にしては、途方もなく難しいものだとは、確かに思います。けれども、その事を「信じ」、ずっと追い求めていく事の大切さを、ジョブス氏は語りかけてくれ、それは私にとっても勇気付けられるような、暖かなものとして届いてくるように感じられます。


ここで、ジョブス氏の話の流れからは、少し逸れてしまう事になるかもしれませんが・・・。

冒頭でご紹介したブログ「美術と自然と教育と」 の著者、山崎さんは、〔「つなげる力」 ('05/8/24)〕の中で、この「点と点をつなぐ」ことに言及され、「つなげる力」を育むということが美術教育で養うべき力だと考えてこられたことを述べられています。

点と点をつなぐという行為は、一見バラバラに見える様々な事象に対して、自ら積極的に関連付けを行なうことでもあるでしょう。
つまり、自分にとっての意味を見出していく、ということ、とも言えるかもしれません。


印象的だったのは、「美術と自然と教育と」の中で、山崎さんが前述の〔「つなげる力」 ('05/8/24)〕 のすぐ後の記事で、〔「命」をテーマにした授業をします('05/8/27)〕との記事を更新されていたことでした。
この記事の内容は、山崎さんが、中学3年生の美術の課題として、「命」をテーマとした抽象彫刻を行なう、というものでした。
卒業制作では「自分という人間の存在証明」というものがあるらしく、それに重なる部分や、制作と鑑賞を「つなぐ」ものとなるような、そんな思いや意図も書かれていらっしゃいました。


山崎さんが、前述の記事の中でも述べられていたような、子供達の気になる言動や事件。そこには、自らと他者、世界との関わりが、どこかで断絶されてしまっているような印象も感じられます。

私はかつて、〔「装飾」とは?('05/5/31)〕という記事の中で、鶴岡真由さんの、「装飾」を施すということは、空間を認識するということであり、そのことによって「世界の計り知れなさ」を知ることなのだという言葉を紹介した事があります。その中でも述べたように、かつては「装飾」=「芸術」であったことを思えば、美術もまた、「世界の計り知れなさ」を知る行為であると言えるかもしれません。


点と点、対象と対象の間に、「つながり」を見出していく。
「つながり」あう対象たち=空間を表現することは、その空間に自ら意味付けをすることでもあるでしょうし、空間そのものと、それを表現しようとする自分自身との間の「つながり」=意味を見出すことにもなっていくかもしれません。


自分とつながりのある空間。それが、自らにとっての「世界」の始まり、とも言えるかもしれません。

そんな多様な世界と向かい合い、深く見つめていくことで、そうあるべき理由や意味を見つけられたとき。そしてそれが、自分の中で、自分なりの「意味」とリンクした時。それは、もはやムダなものでも意味のないものでもなく、関係のないものでもなく、むしろ、かけがえもなく大切なものへと変化するのではないか。(この文章は、前述の記事で書いた内容に加筆したものです。)

美術を通して、そして「命」というテーマの課題にとりくむことで、自分と身近なものたち、他者、そして世界とを「つなげて」考えていくことができれば。そんな風に思いをめぐらせると、山崎さんの取り組みに、非常に興味を感じます。




といったところで、ジョブス氏の話に立ち返って・・・。
ちなみに、前述のカリグラフィについて、私が興味深く感じた別の点は、
「美しく、歴史があり、科学では判別できない微妙なアートの要素を持つ世界」
だと述べている箇所。
この言葉、たびたび「手仕事」と「工場(機械)製造」とに言及してきた私にとっては、思わず膝を打ってしまうものでした。
だって、パソコンという、ある意味、科学の先端技術の結晶を作ってきたジョブス氏自身が実感した事なのですから。
以前、私は、「手仕事」と「工場製造」との違いについて、何ともうまく表現できずに、 「匂いが違う」などと書きましたが、そうした感覚的なところについて、ジョブス氏が代弁してくれたような感じもしてしまいした。


さて、マッキントッシュを開発したジョブス氏ですが、さらにその後、波乱万丈な人生が待ち構えていました。
それは・・・、といったところで・・・。続きます。



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☆「スティーブ・ジョブス氏の言葉」 全記事一覧
 Vol.1 「繋がっていく点と点」:(本記事)
 Vol.2 「心の赴くまま生きてならない理由など、何一つない。」('05/8/29)
 Vol.3 「Stay hungry, stay foolish.」('05/8/30) 


☆過去の関連記事
 何を「高み」と見て、何を目指し、何を極めるか('05/8/22)
 夜を繋ぐ光  「束縛」と「自由」 (Replies?)('05/6/15)
 今、夢を抱く人へ('05/6/5)
 「装飾」とは?('05/5/31)

☆参考blog&記事
 美術と自然と教育と
  〔Steve Jobsのスピーチ('05/8/22)〕
  〔「つなげる力」 ('05/8/24)〕
  〔「命」をテーマにした授業をします ('05/8/27)〕


 PLANet blog.
  :〔スティーブ・ジョブスのスピーチ('05/7/26)〕


posted by Metal_NEKO at 00:14| Comment(6) | TrackBack(2) | 琴の羽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
NEKOさんみたいな崇高な文章は書けませんし、勉強もしてないし、経験もありません。が、自分もはじめたばかりのブログで過去と現在を繋げていけたらと思っている次第です。
Posted by すーさん at 2005年08月28日 09:07
新しくリンク張らせて頂きました。
今後共、よろしくお願いします。
Posted by toshi at 2005年08月28日 10:37
トラックバックそしてコメントさらにはこんな大きな扱いの記事、ありがとうございます。
「美術を通して、そして「命」というテーマの課題にとりくむことで、自分と身近なものたち、他者、そして世界とを「つなげて」考えていくことができれば。」というmeal nekoさんの文、ありがたいなあ。
 装飾の話も参考になりました。どうやら「つなげる力」があると元気が出てくるのかもしれません。
 ブログでつながりました。実は私は美術でなければもしかしたら生物の方にいっていたかもしれません。虫好き少年でしたから。
Posted by 山崎正明 at 2005年08月28日 17:23
>すーさん
いえいえ、崇高だなんて・・・。結構、心のままに書いてしまっています。記憶力も悪いので、ほんとに実感できる事くらいしか、頭に残らないんです。
ただ、私もまだまだ実績も経験にも乏しいと思います。仕事の世界は、実績を重ねてなんぼですので、口先だけの人間になってしまわないように・・・、気を引き締めていきたいと思います。
まずは、心がまえと方向性をしっかりしておきたい、そんな感じかもしれません。

すーさんの「過去」と「現在」を繋ぐ試み、とても関心があります。古材の再生・有効活用や、民家の再生、街並みの保全や再生・・・。どれも、現代だからこそ、とても意義のある取り組みだと思います。
私も、「時間」の流れを感じる事が出来るような、そんな物作りに取り組めたらいいな、と思っています。

Posted by Metal NEKO at 2005年08月28日 20:07
>toshiさん、リンク先を更新して下さって、ありがとうございます!
北海道の素晴らしい景色を見る事ができて、楽しみです。
また、よろしくお願いいたします!
Posted by Metal NEKO at 2005年08月28日 20:08
山崎さん、こちらにもお越しくださって、コメント頂き、ありがとうございます!
私も、Blogを始めて、本当にたくさんの方々とのつながりを実感しています。

私は、生物を学んだ事で、あらゆる生き物に共通する、「生きていく」ということを、改めて感じる事が出来たように思います。
「自分という人間の存在証明」、やはり若い頃には、一度は深く考えこむものだと思います。
私も例にもれず、「自分とは何か」、「なぜここにいるのか」、「どこから来てどこへ行くのか」、などと、ひたすら考えていた時期がありました。
自分という存在を認識するのに、他のものとの違いをはっきりさせていく捉え方もあるでしょうが、私はどちらかと言えば、「同じ」ことを探し求めてしまいました。
私と他人の中には、違うように見えて、やはり同じものがある。人間と他の生き物も、細かく見れば違うけれど、大局的に見れば、同じなのだ、ということに・・・。
普遍的なものを見出していくことは、今思えば、それも「つながり」を見出していくことなのでしょうね。
世界の中に「つながり」を見出し、途切れることなく流れている大きな時間の中で、自分もまた過去から未来へと繋がっているのだと感じた事で、「私は、今、ここにいる」という事を認識できたのだと思います。

「つながり」というのは、特に大切なキーワードなのかもしれませんね。
今後とも、よろしくお願いいたします!
Posted by Metal NEKO at 2005年08月28日 20:09
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